皆さんは、「書店アルバイト」にどんなイメージをお持ちですか?
- 暇そう
- 楽そう
- 静かで落ち着いてそう
- 真面目でひ弱な人が多そう
- はたきでホコリをパタパタしてればよさそう
- registerで本を無限で読めそう
- 本にやたらと詳しそう
- メガネの人が多そう
世間が持っている書店アルバイトのイメージって、こんな感じではないでしょうか。
というのも、大学に入学したての頃の私がそうでした。
大学生だしバイトしなきゃなーと思いながら、何気なく入った駅前の小さな書店で、「アルバイト募集!」の貼り紙を見たのが全ての始まり。
上記のイメージから、「いいじゃん!本屋ってラクそうだし」とその場で面接を申し込んだのです。
あれから約15年。
あの頃の私に今の私から言えることがあるならば、こうですね。
「え、暇そうって何が?落ち着いってるって?いつ?ひ弱?え、誰が?」
レジにお問合せに品出しに電話対応。
じっとしている時間はほとんどありません。
知らない人が多いと思いますが紙ってたくさん集まるとすっごく重いんです。
本がぎっしり詰まったダンボールは、だから重い。
いつの間にか、思ってもみなかった重さのダンボールを軽々と持ち上げられるようになっていて、たくましさに磨きがかかっている……。
あ、ちょっと待ってください!帰らないで!「『書店アルバイトを甘く見るな』って怖がらせたいんだろ」って、そういうことじゃないんです。
書店アルバイトが気になっている人、だけどどんな仕事なんだろう、きついのかな、大変なのかなと今一歩踏み出せない人の背中を押す意味を込めていいます。
学生時代の私と同じようなイメージを持ったまま働き始め、「思ってたのと違う!」とすぐに辞めてしまう人が減ることを願って。
事前に書店の仕事内容をイメージできれば怖いことは何もないはずです!
現役書店員が、書店アルバイトのリアルをお教えしたいと思います。
本屋バイトはレジを極めることから始まる
スーパーやドラッグストアなど、小売店の求人情報では「品出し」のアルバイト募集をしていることが多いですよね。
開店前や夕方の時間帯など、「品出し」のみを行うこのアルバイトですが、書店ではあまり見かけません。
それというのも書店、特に大型書店では、売り場ごとに担当者がおり、担当者以外が売り場を触ることがあまりないんです。
そのため、書店アルバイトと聞いて「本を並べる仕事」をイメージすると、ちょっと期待外れになってしまうかもしれません。
じゃあ書店アルバイトって、入ってすぐは何をするのか?
ずばり「レジ打ち」です。
商品をレジに通して会計をする、というごくごく普通のレジでのやり取りついては、アルバイト自体が初めてだという方でも、お客さんとして経験があるはずです。
そのためイメージはできると思います。
ですので、書店特有のレジ業務についていくつか紹介します。
「ブックカバー掛け」は慣れしかない
書店のレジでよく聞かれる「カバーはお掛けしますか?」のフレーズ。
文庫、新書、文芸書をご購入のお客様には必ず尋ねます。
なんてことない一言ですが、この質問をするときって、新人の頃は心臓バクバクなんですよ。
だってまだ、めちゃくちゃ下手で遅いから。
お客様が「はい」と言おうものなら、「えー……いらないって言えよ」と内心毒づいていたくらい。
でもこれは慣れです!
数をこなす以外に上達の方法がありません。
「練習させてもらってる、ごめんねありがとう!」の精神で、どんどん聞いてどんどん掛けましょう。
「コミックのシュリンク」は単純だけど難しい
コミックって、ビニールでパックされている状態で書店に並んでいますよね。
あの、ビニールでパックする作業のことを「シュリンク」、シュリンクするための機械のことを「シュリンカー」といいます。
コミックはシュリンクされた状態で入荷してくるのではなく、書店が現場単位で加工しているんです。
レジカウンター内にシュリンカーを置いている書店も多く、そのため、シュリンク作業はレジ担当の仕事として割り振られている場合があります。
レジって、一日中ずーっとレジをしているわけではないですから、「お客様が途切れた隙間時間にシュリンクやってね」ということです。
シュリンカーのタイプにより、所定の位置にコミックを置くだけで自動的にシュリンクしてくれるもの、コミックを専用のシュリンク袋に入れて通すものの2種類がありますが、言うなれば単純作業です。
ついつい心が「無」になりがちですが、お客様の動きを見つつ、シュリンク優先度の高いコミックを見極めつつ、コミック担当者が品出ししやすいようにシュリンク後の商品を仕分けしつつ……となると意外と難しいんです。
上達すると自分でもはっきりとわかるので、単純作業といえどもやりがいがあります。
あと地味ですが重要なこととして、
「シュリンカーのスイッチ、切るタイミングは要確認!」
シュリンカーは、熱を発生させてパックする機械なので、スイッチオンから稼働までにタイムラグがあるんです。
そのため、切ったらまた稼働までに待ち時間が発生してしまいます。
新人の頃は、よかれと思って小まめにスイッチを切りがちなんですが、切った後にコミック担当者が山のような補充分を持ってくる、「おい、誰が切っていいて言った?」という目で見られる。
これはあるあるなので、スイッチオフの前に必ず先輩スタッフに確認しましょう。
それだけで、「なんて気が利く新人さんなの」という印象を与えることができますよ。
「客注・定期購読の販売」で常連さんがわかる
店頭に並んでいる商品のレジをするだけではなく、書店にはレジ内で保管する「客注」と「定期購読」が存在します。
客注とは、店に在庫がない商品をお客さんの希望により取り寄せした注文品のこと。
定期購読とは、週刊誌や月刊誌などの定期刊行物を「毎号買ってくださいね」という約束のもと、あらかじめ取りおいている商品のこと。
常連さんが多いので、顔を覚えるまでになったらほとんどあなたはレジの達人。
レジから飛び出し売り場へと、次のステップに進みます。
「お問い合わせ」は書店員推理力が培われる
書店での仕事において、レジの次に避けて通れないのが「お問合せ」。
お客様のお目当ての商品を探し出すお仕事です。
こんなこと書いたら怒られるかもしれませんが、私が新人だった頃、先輩に言われて今も肝に銘じている言葉があります。
「お客様の言うことは、3割くらいしか信じちゃダメ」
なんでだよと当時は思ったものですが、今は言えます。
本当にそう。
実例をどうぞ。
「今日発売なんだけど」 | 調べた結果、発売は4年前 |
「昨日のNHKでやってたんだけど」 | やってなく、先週のTBSと判明 |
「乙武さんの本」 | 乙一さんの本 |
「明滅の牙」 | 鬼滅の刃 |
「表紙が青いやつ」 | ありすぎる |
「生まれたままで大丈夫」 「がんばっていきまっしょい」 | 「あなたはそのままでいいのよ」置かれた場所で咲きなさい 2012年発売の大ヒット本です |
マジ?と思われるかもしれませんが、マジなんです。
上記全て、私が実際に受けたお問合せの一部です。
レジを経験し、書店のアルバイトにも慣れてきたぞという人が、あまりの難題ぶりに頭を悩ませる「お問合せ」という業務。
だけど全然大丈夫。
これが書店の日常なんです。
ほとんど探偵の気分で、楽しみながらお問合せを受けていけばいいんです。
怖いと思っていた先輩と、「私こんなん受けました~」と仲良くなるきっかけにすらなるはずです。
大切なのは、普段からたくさんの商品に触れておくこと。
難しいことではありません。
レジをしているとき、売り場の掃除をしているとき。少しだけ興味を持って本を眺めるだけで大丈夫です。
日々ちょっとずつ集めた知識を、お客様から引き出した情報と掛け合わせる。
その繰り返しです。
それに何よりうれしいのは、どんな難題でもお客様のお目当てを探し出せたとき。
お客様からの「ありがとう」を積み重ねて、いつの間にか百戦錬磨の書店員へと成長していくわけです。
まとめ
よく、「本好きにしか務まらない」と思われがちな書店アルバイトですが、一概にそうとも言えません。
日々増え続ける商品の全てを把握しておくなんてことは無理ですし、好きな作家さんやジャンル以外はあんまり……ということは珍しくないはずです。
近道はないことを肝に銘じ、毎日の勤務で少しずつ知識を増やしていけば、本に詳しくない人でも大丈夫。
アルバイトや副業でやってみたいと悩んでいる方、書店で働くことは大変である以上に楽しいですよ。
あ、メモ帳とハンドクリームはマストです!
副業やバイトの基礎知識はこちらの記事が役立ちます。